【SR400 メンテノート】整備センスを磨こう!

バイク

はいどうも、こんにちは!秘密基地ひろしです。

いつもコメントをたくさん頂きまして、ありがとう御座います。

コメントの中のご要望で多いのは、もっと整備を詳細に説明して欲しいというものです。

そこで初心者の方にも分かり易いように、出来るだけ懇切丁寧にやっていく所存なのですが、少し限界を感じています。

と言いますのも、こういったブログでノウハウはお伝え出来るのですが、実際に読者の方が個々人のバイクや車に対峙したときに、その状況って少しづつ違います。

そんな訳で、記事で見た通りにやっても上手くいかないことがありますので、その変化に対応する為の応用力が必要になってきます。

整備センスを磨こう!

そこで整備センスを磨こう!というお題で今日はお話ししたいと思います。

私に整備センスがあるかどうかは一旦棚上げです(笑)が、カーメーカーに32年勤めていましたのでその知見の中からお話ししたいと思います。

整備センスを磨こうって言われても、随分抽象的ですよね。そこで分かり易い事例を準備しました。

分かり易い事例その1

これは実際、20年ぐらい前に私が遭遇したものです。

当時、アメリカで新型車の生産立上げ業務をやっていました。そこで現地現場の米人の中から優秀な人を選抜して開発チームを編成しました。

ある日、そのメンバーの1人に試験車のタイヤ交換をお願いしました。

「タイヤ交換、やっといたよ~」と言われ、「ありがとう!」って返したのですが、見てみると何かオカシイ。

その時の状況を再現したのが下の写真ですが、何がおかしいか分かりますか?

タイヤ&ホイールの交換を頼んだら、こんな感じで返ってきました。何がいけないのか分かります?

そうなんです!ホイールナットが逆向きに締められているんです!

見て最初は「バッカだな~」って正直、思いましたし、とても驚きもしました。

でも次の瞬間、とても深く考えさせられました。

正に整備のセンスが無いとこうなっちゃいます。ただその人個人やアメリカをどうのこうのいうつもりでは無いです。

こういう時こそ好奇心全開です。

その人は、4輪全てのホイールナットを逆向きに付けていました。ホイールナットはホイールに合わせる側はテーパー状になっていますが、表側は平らです。通常、ナットというものは平らな方を締めたい方向に向けますから、ある種その人の考え方は合ってます。

しかし何時如何なる時でも好奇心を持つことが必要で、好奇心があれば、ナットの両側で形が違うことに気が付くはずです。

気が付けば、一先ず、このナットには方向性があるということが分かります。

そうすると何かヒントがないかなとホイール側をしげしげと眺めます。するとホイール側もテーパー形状になっていて、「ハハーン!テーパー同志を合わせるんだな!」と思考がひらめき、更には、そこにセンタリング機能が在ることに気付く訳で、それが整備センスを磨くということになります。

そしてそれはその人の知見、経験となって、ホイールだけではなく色々なことへの応用になっていき、サービスマニュアルを見なくても、人に聞かなくても分かるようになります。

ある種、部品が語り掛けてくることを掴み取るテクニックといえると思います。

そういうことが分かってくると、この簡単な事例からもっと飛躍があります。

オタクな事例その2

ホイールの取付基準は真ん中のセンターハブの穴の合わせです。

ホイールの取付け基準穴って実はこのセンターハブなんです。ですからホイールナットの締付に逃げ穴が無いのは構造上の矛盾があります。

工業製品は精度100%では作れないので通常、公差があります。なので基準穴が設定されている場合、他の取付穴は公差分の変化に対応出来る方向に逃げ穴の設定が必要です。

となるとホイールの場合、ホイールを締め付けるハブのスタッドボルトの位置とホイールの穴の位置はずれますので、ホイール中心から放射状に逃げ穴の設定が必要です。

しかしながらホイールの締付穴はテーパー状になっておりセンタリング構造ですから、逃げ穴はみじんも無いです。

するとここは強引に締めてしまう構造なんだと理解出来ます。

そして次なる思考のステップとして、ホイールナットは対角線上に少しづつ均等に締めてズレが1穴に集中しないようにすることの重要性に至ります。

そこまで行ければ正に整備センスを磨いたことになります。

まずは習うことが大事ですが、そこから構造や仕組みを理解することが重要です。

今回の事例では部品の穴がテーパー状なので通常とは違ってナットもテーパー側を合せて締める。これは誰しも子供の頃から知っている訳ではなく、どこかのタイミング、違う事例として学習しており、ちゃんと応用出来ている。その源泉は好奇心になります。

そしてそれ自体が整備センスを磨くということになります。

件の米人はそれまでに学ぶ機会が無く、また興味が無いことなので好奇心が働かなかったということだと思います。

かといってケースバイケースで全てを学ぶことは難しいので、好奇心を持って色々な経験、知見を積み上げて応用力という技を極めていく、そうすれば部品、シチュエーションや、たとえ国が変わっても対応が出来るようになります。

そしてそれが整備センスを磨くことになると思います。

余談ですがその米人とはよく雑談をしていて、前職はアメリカ軍の音楽隊でコーラスをやってたらしいんです。そういう方が思うところあって自動車メーカーの工場に勤めているというのも何ともアメリカらしくて素晴らしいです。

ただその人が培ってきた音楽の技術とモノづくりの世界では違うことが多いので、その人は人一倍に好奇心を持って努力される必要がありますが、それも人生で、どんどん豊かになっていって面白いと思います。

分かり易い事例その3

もう一つ事例をSR400でご紹介します。

SRの場合はこのサイドカバーの取り外しですね。これはM6のボルト1本を外せば簡単に外せますが、落とし穴があります。

こんな簡単なサイドカバーの取付けでも整備センスを磨くネタがあります!

ボルトにはワッシャが付いているのですが、サイドカバーのゴムブッシュに貼り付いていて、存在自体が認知出来ないですし、不味いことに作業中にポロリと落ちて失くしてしまうこともあります。

サイドカバーの取付けボルトを抜くとワッシャが入ってることが分かるんですが、コイツ、サイドカバーのゴムブッシュに貼り付いて身を隠していることが多いです。

さらに良くないのは、この取付け穴にはゴムブッシュが入っていて、コイツはそうそう取れませんが、中に入ってるアルミのカラーがタイトに嵌ってないので、これまた作業中に落ちてしまいます。

このワッシャとカラー、運良く落ちたところを発見出来てもどこに付いていたのか分かりません。

さらにゴムブッシュの中にはアルミのカラーが入っていて、ブカブカでは無いですが簡単に落ちちゃいます。ほとんどこれはいじめです!

そこで整備センスの発動です。

ゴムブッシュをボルトで直接締める訳は無いよな!という知見はどうしても必要になります。

そうなると金属カラーがあったハズだ!ということで、不運にも落下に気付かなくても探し出してゴムブッシュの中に戻すことが出来ます。

ここまで来て、「ハハーン!コイツは振動対策としてのフローティング構造なんだな」と分かれば、カラーをフレームとワッシャの壁でサンドイッチすればフローティング構造が機能するという考えに至れます。

そしてワッシャはサイドカバーの外側に付けて締付けることがサービスマニュアルを見なくても分かります。

これぞ正に整備センスの為せる技です。

こんな些細な簡単な事例ですが、いたるところに整備センスを磨くネタは転がっています。そしてそれを磨く為の源泉は好奇心ということになります。

好奇心があれば部品を外した時に、「あれっ、これってどんな構造なんだろう?」とか「この部品、組付ける向きがあるぞ」というような違いに気付けます。

そうなれたらしめたもので、カラーの場合は外観上、向きは無いと判断出来ますし、構造上向きのある部品ではないという知見も積み上がります。

さらに突き詰めれば、ワッシャに取付け向きは無いもの、両面で違いがあることが分かります。

ワッシャはプレスで打ち抜いて作られるのでプレス方向の面の角は鋭利で、反対側は少しだけ丸みがあります。

これは好みの問題ですが、丸みがある方を外側にした方が手切れ感がなく、見栄えも良く、そんなことにまで整備に気が配れる余裕が出来たことになります。

この事例はサイドカバーの取付けといった簡単な事例ですが、こうした小さな知見の積み上げがあれば、ブレーキ等の重要保安部品も整備していける礎になりますから、非常に大事なことで甘く見てはいけませんね。

まとめます

整備センスを磨くということは、端的にいうと何事にも好奇心を持とう!ということになります。

好奇心さえあれば、「なんでこうなってんだろう?」とバイクや車の構造、仕組み、理屈を理解しようとします。ですからそういう行動、思考パターンを身につければ、整備だけではなく日常の色んなことへの応用が効きます。

そしてその構図が見えてくると整備も断然に面白くなってきます。

偉そうなことをいってますが、私も日々、失敗の連続です。今後も整備記事を上げていきますので、一緒に勉強していければと思います。

最後までご覧下さいまして、ありがとう御座いました。

次の記事でお会いしましょう!それでは、また!

動画版はこちらになります

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