はいどうも、こんにちは!秘密基地ひろしです。
とあるSRユーザーの方からメールで質問を頂きました。「リアハブのグリスアップってどうしてますか?」と。
答えは簡単で「グリスガンでブチューって入れてますよ」なんですが。
相手の方はそういうことを聞いてらっしゃる訳ではないのです。
質問を頂きました
ご先祖XT500には付いていたドライブハブ回りのOリングが3本、SR400、500では廃止されていた件はどうも有名らしく、無造作にグリスアップすると、特に内側にグリスが溢れ出るらしくて、適正な量の充填方法について問われている訳です。
ネットで情報を探るとここは結構、件のOリングを追加される方がいらっしゃいます。Oリング自体はそんなに高くないですが、自分でバイクに取付け出来ない場合の工賃は結構な出費になります。そこで現状の構造のままで、どれぐらいグリスを充填すればいいのかを探っていきたいと思います。
まずはバラします
実は私、SRのリアハブをバラすのって初めてなんです。
SRには今時なかなかお目に掛かれないグリスニップルが2か所あります。一つは悪名高いスイングアームのピボットです。
こちらは普段ニップルを外しておくことになっており、工具ボックスの蓋に何気にくっつけられています。スイングアームのピボットのキャップスクリュウを外して装着しての使用になります。
2つ目が今回のドライブハブになります。こちらのニップルは常装で、「たまには入れてね!」ってアピールしてます。一方、長いこと入れないととんでもない結末が待っているので、一種の脅しとも受け取れます。
バラしてみるとニップルの内側は当然ですが、軸受けになっています。ここのハブ側の軸には溝が一周掘ってあって、グリスが全周に行き渡るようになっています。
実は私ちょっと誤解していまして、グリスニップルはホイールベアリングにも繋がっていて全体に行き渡るのかと思っていたのですが、実際は独立していて、ドライブハブの軸だけのようです。
なるほどXT500ではこの軸受けの内外にOリングが在ったらしいのですが、SRには皆無です。一部ハブダストシールの外周にOリングが入る溝が切ってあるので、その名残を見受けられます。
グリス入れてみます
一旦全部組んでみて、グリスアップしてみます。
グリスガンをドライブハブのニップルに差し込み、グリスを充填していきます。
耳を澄ますと小さくプチッ、プチッとグリスが行き渡る音がします。
そしてそのプチッが、ブチッと大きな音に変わると、ハブダストシールの内側からグリスがニュルっと出てきました。
一旦ここでグリスアップは止めます。そしてこの状態で分解して中の状況を見ていきます。
分解して確認です
まずはサークリップを外し、ハブダストシールを取り出します。
ここには全周の1/3程度、グリスが回っていますが、ここは潤滑すべき場所ではないので問題は無いです。
次にハブストッパーを取り出し、いよいよドライブハブを外します。一番心配していた内側へのグリスの溢れ出しは無いようです。当然ダンパーへのグリス付着も無く、且つ境界線までキッチリグリスが流れ込んでいます。
また一番重要な軸受けですが、ハブ側の溝にはキレイにグリスが行き渡っています。
詰まるところ、グリスアップするときに外側から察知出来るのは、外側へのこのグリスの溢れ出しだけですから、どれぐらい溢れ出すとグリスアップを止めるべきかということになります。
そうなると少しでも溢れ出た瞬間に止めれば、十分満足いくグリスの充填状況です。
それ以上に充填すると内側の見えない部分での溢れ出しに繋がりますので止めた方が良いです。
オイルシールが廃止された件
ご先祖XT500では付いていたドライブハブ回りのOリングが3本廃止されたことについて、すこし思うところをお話しします。
ヤマハの肩を持つ訳ではないですが、バイクメーカーやカーメーカーは日々、VA活動っていうのをやっています。簡単に言うと原価低減活動です。
VAとはValue Analysisの略(日本人て本当に略が好き)で、漢字にすると”価値分析”になります。
部品一点一点についてオーバークォリティーになってないか何回も見直します。そして、他の材料やプロセスに変更することで、機能や品質を損なわずに原価を低減出来ないか日夜研究している訳です。
何故かというと競争が激し過ぎて、そうしないと生き残れないからです。
このVAの対極にあるのがCDでCost Downの略です。即ちコストダウンです。
業界でのCDの意味合いは、訳無しでプロセスや材料をダウングレードし原価を下げることです。当然、製品が安かろう悪かろうになりますので、意味が無いですし、ご法度です。
ですからメーカーのエンジニアは強い心を持って、自分のやっている原価低減がVAであり、CDでは無いこと確認しながら活動を進める必要があります。
件のOリングの原価は1本10円もしないと思います。1台当たり3本なので30円しないです。
たかが30円ですが、メーカーは1銭単位で原価低減活動を行っており、30円は1銭の3千倍ですから看過出来ません。
そして塵も積もりてですから、一つ一つの小さな低減の積み重ねが重要になります。
低減されたコストはメーカーが留保するように見えますが、最終的にユーザーに還元されます。
ですからこれはユーザーにとっても大変重要なことなんです。
今では250ccでも100万円近く出さないと買えない時代ですが、SR400が55万円で買える裏にはこんな活動があるのです。
Oリングの廃止がVAだったのかCDだったのかは今となっては闇の中ですが、冷静に見るとオイルシールとグリスニップルが両方付いてるのは、ズボンを例にいうと、ベルトとサスペンダーの両方をしているようなものです。
過剰な状態とも言え、ベルトかサスペンダーのどっちか一つを抜いてもズボンは落ちない筈です。
メンテナンスフリーを考えると、グリスニップルをVAしてオイルシールに変更すべきですが、ヤマハがそうしなかったのは、現状の構造ではオイルシールだけで潤滑を長期的に保てないんだと思います。
Oリングが最初から無ければ良かったんですが、在ったものが無くなって、しかもそれを取付ける為の構造が残っていると、ユーザーとしては大変残念な気持ちになるのは当然です。
でも一方でよく考えてみますとSRってキックスタートしかなく、わざわざ不便を買うようなバイクです。
この場合は逆パターンで、ユーザーの方から「絶対セルモーターは付けないでね」という要求に対して、メーカーも同調している訳です。
グリスニップルも然りで、存在すること自体がメーカーからユーザーに対しての負担の境界線の提示で、定期的なメンテナンスを促しています。
ドライブハブは分解が難しいので、ニップルを残したんでしょうね。
ニップルもオイルシールも両方無いと立ち行きませんが、ニップルの存在が全てを物語っていると思います。
面倒臭いですけど、SRってそもそも古典で、不便なものですから、ユーザー側からも一方的にそこを理解して楽しむことが重要だと思います。
まとめ
冒頭の質問に対する答えをまとめておきます。
リアのドライブハブは常装のニップルからグリスガンを使ってグリスアップします。
充填の目安は、ハブダストシールから少しでもグリスが溢れ出てきたら完了です。
この状態で軸受け部に十分グリスが行き渡っていますし、裏側へのグリスの漏れ出しも無いです。
一方、オイルシールは無いので定期的なメンテナンス、充填が必要です。
一々分解して中を確認してはいられませんから、オイル交換の時にバイク屋さんに頼んで一緒にやっておけば問題無いように思います。
ついでにスイングアームもお忘れなくって感じです。
またグリスガンってホームセンターで1,500円しませんし、グリスガンに装着するための蛇腹パックに入ったリチウムグリスは200円程度と安いですから、自分で買ってやってもいいかと思います。
よく考えたらこの作業ってリアシートを外すことより簡単ですから。
以上ですが、ご覧下さいまして、ありがとう御座いました。
次の記事でお会いしましょう!
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