【ホンダ S660】本当はおいくら万円?

クルマ

はい、どうもこんにちは!秘密基地ひろしです。

今回はホンダ S660のお話ということでお題は、S660って本当はおいくら万円?というのをお送りしたいと思います。

S660は生産終了の宣言後、中古車価格が高騰してますけど、その値段が適正かどうかをみようっていう訳ではなく、そもそもいくらで売られるべき車だったのかを検証していきたいと思います。

といいますのもS660は登場以来、幾多の専門家や色んな方から「こんな値段で買えるなんて信じられない!」、「こんな車、もう二度と出ない!」とか、「ホンダだから出来る大技で、大盤振る舞い!」とかですね、いろんなご意見があったと思います。

即ち、S660は値段以上の価値があるということで、車業界の元端くれの私としても同じように思います。本当にバーゲンプライスですよね。

そこで、あるべきメーカー希望小売価格って一体いくらだったのか?このS660の価値を改めて検証していきたいと思います。

【動画版はこちらです】

【ホンダ S660】本当はおいくら万円?

前提条件

最初にお断りなんですけど、この記事は全くもって私の知識と経験を使っての趣味でして想像です。何か裏情報を持っているとか、そういうことではありませんので、まあ肩の力を抜いて、気軽に見て頂ければと思います。

では早速に始めたいと思うんですけど、まあS660が出た時と車両価格が変わってて、ややこしいんで私の乗ってるS660 アルファの6MTが多分、一番の売れ筋だと思うんで、コイツのメーカー希望小売価格で考えていきたいと思います。これまた、ややこしいんで金額は全て税込みで話しちゃいます。

私のS660はメーカー希望小売価格が2,321,000円でした。これが本当はいくらで売るべきだったかっていうのを検証してきたいと思います。

いきなり結論

いきなり結論です。いつもグダグダやっている私にしては珍しいんですけど、結論としてS660の本来のあるべきメーカー希望小売価格は3,481,500円ですね。ちょうど1.5倍になります。

そんな訳で、もし定価で買ったとしても、およそ33%引き!金額でいうと116万円引きで買えたわけです。私もそうです。なのでS660を買った人はすごくお値打ち感があって、良いモノが安く買えたということです。

一方、リアミッドシップのオープン2シーターってことで、性格も尖ってますから、だからといって誰も彼もがホイホイ買った訳でもなかったということになります。

次にどうやって試算したのかを、ちょっと説明したいと思います。

試算の理由

まずは定価約232万円の内訳をみていきたいと思います。内訳は下の円グラフのようになってて、ちょうど半分の50%が比例原価とみました。比例原価というのは、その名のとうり比例費で、固定費を含まないです。

結構簡単なもんです。比例原価が半分、メーカーディーラーで限界利益を1/4づつです。ただここには固定費が含まれません。

比例費とは、まずはホンダが車を作るために社外から買ってくる部品、そしてエンジン、ミッション、プレス、ボディ、塗装は自社で作りますので、それらを作る為の材料費とか工数があります。

そして、それらの部品を最後に全部集めて、プレス、溶接、塗装、組立て、検査をやりますのでその為の材料費、それから工数を合わせたものが比例原価になります。

このS660は定価の半分の116万円が比例原価ということになります。一方、限界利益はホンダとディーラーが25%づつ取ると予測します。

限界利益は固定費を含まない比例費だけ見たときの利益を言います。特にカーメーカーの場合、企業規模が巨大なので、固定費の考え方が難しく、ひとまずは比例費だけで収益を見ていきます。

この円グラフを見ると25%づつも利益を取って、まるでボッタクリじゃねぇの?って思うかもしれませんが、さにあらずで、ホンダの2020年度の決算は営業利益率5%でした。カーメーカーの通常のあるべき営業利益率って、だいたい6~8%っていわれてますから。ホンダは調子が悪かったということになります。

メーカーが限界利益を25%も取るのは、固定費で持っていかれる部分が多いからです。ですから固定費を出来るだけ下げて、比例費を確実に取っていける様にしておかないと、なかなか企業の財務体質は良くなりません。

一方、ディーラーはもっと状況が酷いと思います。ディーラーの場合、お客の責任じゃないですけど、車を買うときの値引きって結構粘りますよね。その結果、ディーラーが出す値引きは、ディーラーの限界利益25%の中から出ます。ですから値引きが大きいほど儲けが減るということです。

更に当然、ディーラーも固定費があります。事務所、ショールームであったりサービス工場がありますから、そういう固定費を限界利益25%から引くと、ほとんど利益が残らないのです。

なので出来るだけ安く、お客に車を販売して、車検や保険とか、まあ、それにまつわるものを販売することで、ディーラーのビジネスモデルって成り立ってる思いますから、結構大変です。

比例費と固定費

事業性は最終的に当然、固定費を見ていかなきゃいけないんで、比例費と固定費の関係を話したいと思います。

車の開発、生産は固定費を如何に減らすかが肝です

比例費はS660を作る為に必要な部品の購入費用とそれらを最終的に組立てて完成車にする生産コストの合計になります。

ですから比例費は1台作っても100台作っても、1台当たりの費用は同じということになり、健全な費用です。

次に固定費ですが、これが結構厄介で、カーメーカーの場合は二つに分かれます。

一つはS660の開発投資として特定出来る固定費です。例えば、色んな部品はほとんどが金型でできてますので、その費用が固定費になります。それをS660にしか使えない部品の金型であれば、それはS660専用の開発投資(固定費)ということになります。

一方、S660を作る為に、例えば八千代工業で生産ラインを一本引引いた場合、それにはN-VANも乗って一緒に使いますよって話になると、それはS660だけの開発投資じゃなくなっちゃうんですね。そういうものはホンダ全体の設備投資ということでまとめていきます。その中には当然、ホンダの青山の本社ビル、鈴鹿工場とか寄居工場があります。また、その中には沢山の生産設備があって、そういうのが全て固定費になります。

専用でない固定費はS660だけではなく、色んなホンダ製品を作ってるので、どの車がどれだけその固定費を使ってるかは分け辛いんですね。また、社長なんかも立派な固定費です。生産、販売台数が変動しても社長は一人ですから。それから人事課とか総務課とかのサポート部署も車の生産量で変わったりしないので固定費ということになります。

そうなってくると収益が掴み辛いんですが、どうやってるかというと、まずはS660の中でガチンコ勝負です。S660のホンダの限界利益でS660の開発投資額を賄います。限界利益を使って、何年何ヶ月で開発投資額を回収出来るかが勝負になってきます。

今は車のモデルライフは6年から8年ぐらいまで伸びてます。とはいうものの最初の1年ぐらいで開発投資回収をして、あとは儲けに移れるようにしないと商売にならないです。

そしてこれによってS660だけではなく、ホンダのフィットとかN-BOXとか、全ての車の収益を集めて、毎年いくらぐらい儲かるかが分かるようにします。それに対してホンダ全体の固定費が毎年どれぐらいの規模で償却費がいくらかを出し、全体収益から差し引いて最終的に年度でいくら儲かるかをみていくことになります。

月間販買計画800台

実はここまでツラツラと書いてますが、第三者でも簡単に分かる数字があります。それはホンダが計画した月の販売台数なんです。

S660の場合、月販800台に設定されてたんですね。で、これは見る人が見ればすぐに嘘だと分かります。なんでかというと、ビートは6年で34,000台ぐらい売りましたので、月500台ぐらいでした。でも、それって90年代の話で、その後、日本の車市場の需要が3割ぐらいも落ちてますから、まあ、いいとこ月400台ぐらいしか売れない訳です。

ビートは6年で約34,000台販売したそうです

マツダのロードスターも良い指標になっていて、大体、月に400台ぐらいしか売れてないです。スポーツカーの場合、初年は人気が出てバックオーダーを抱えるほど売れますけど、2年目からはジリ貧ですから、月販800台はどう考えても盛り過ぎです。

この手の車のキング、マツダのロードスターでも日本国内の月販は400台程度です

大事な嘘

ただ、これってすごい大事な嘘なんです。この嘘みたいな計画が無いとスポーツカーの企画って通らないし、ホンダとしてはそれでなんとかこのS660の企画を通せたし、ユーザーとしてもS660を手に入れることが出来てるんで、大変に大事で重要な嘘なんです。

まあ、そんな訳でなんとなくネガな話をしているような気がしますけど、そうではなくて、私はもう全面的にホンダに拍手喝采を送りたいですね。

スポーツカービジネスというものは四角四面に、「いや~実は月400台ぐらいしか売れなさそうなんですよ~」なんて話をすると、そこでもう企画がポシャります。

一方、言い方としては「NSXとかS660みたいなスポーツカーがあるからこそ、ホンダみたいなメーカーはフィットとかN-BOXが売れるんですよ」っていうのは、ホンダの社長は知ってるし、お客だって知ってるし、みんな知ってることです。

だけど、「じゃあ、S660は金額的にいくらぐらい貢献してるんだよ?」ってのは数字では出せないんですね。ということは、株主を納得させられないんで、その言い訳は使えないんです。

なので、月販800台ってのは盛り過ぎだって、みんな分かってるんですけど、それでも経営陣に対して開発チームはお伺いを立てていくんです。そうすると経営陣だって分かってますから、最初はもうバカ野郎ぐらいの怒号が飛んで「なんで月800台も売れるか言ってみろ!」みたいな話になる訳です。

でも、この茶番みたいなのが凄く大事なんです。そこで開発チームはかなり落ち込んで、一生懸命に月800台を売る為には何をすればいいかを考えるんですね。そして考えに考え抜いた末、できたのがこのS660だということです。

そうすると最終的に役員、社長も「しようがねえな~絶対売れよ!」みたいな捨て台詞を吐いて、ハンコを押してくれるという建付けになってます。

だから本当にこの三文芝居みたいなのが、凄くホンダにとって大事ですし、我々ユーザーにとってもとても重要なことなんですね。これがなければS660には会えなかったのですからね。

私はホンダに勤めてた訳ではないので、ホンダの開発投資の回収期間が何年に設定されているかは知らないです。ただ、一つ面白いのは、私みたいな外部の人間でも分かるのは、ホンダが月販800台ぐらいで企画したものが400台しか売れないっていうのは、最初から大体分かってたことなんです。

となるとホンダは一台当たり58万円の限界利益を上げようとしてたということは、回収期間が二倍に伸びていますから、本当は二倍の116万円をお客様から申し受けないといけなかったということになります。

それで、これはディーラーも然りで、ホンダが116万円、ディーラーが116万円、それから比例原価も116万円ということで、三倍して、348万円がこのS660の正しいメーカー希望小売販売価格だということになるんですね。

だから外部の人間でもオフィシャルの数字を色々とこう足し合わせて考えると見えてくるモノがあるんで面白いですね。

開発投資額

でまあ、ここまで話しをしたので、ついでにS660の開発投資額がいくらだったかも、ちょっと余計に詮索してみましょう。

自動車の開発には大きく、金型費、開発人件費、設備投資額の三つの投資が必要になります。

一つ目は金型費ですね。ドアトリム、インパネとか、当然、外板もそうですし、ハンドルとか色々と金型で作らなきゃいけない部品があって、特にS660みたいな他のホンダ車と共有出来る部品が少ない車種は専用の金型が多くなります。

これらの金型が大体600種類ぐらいあると予想します。そうすると金型もピンキリで、デカいのは一つ5,000万円ぐらいしますし、小っちゃいのは300万円ぐらいってことでばらつきありますけど、結構なお値段はします。金型の平均費用を1,000万円と仮定すると、600型で全部で60億円というふうに推測してみました。

自動車部品もたい焼きも同じです。大量生産に金型が必要必須です。

二番目が開発人件費ですね。これ面白いのはホンダのホームページにS660の開発チームの写真が載ってるんですね。で、何が面白いかというと、ホンダほどの企業になると雑誌の取材とかは頻繁ですから、「写真撮るからみんな集まれ~」となってもそんなに来ないです。だけど、S660とか尖った車だと、みんなのモチベーションが高いんで、写真撮るとなると、みんな集まってくるんですね。

こういう楽しい車の開発は、関係無い人まで集合写真に来たりします

でまあ、写真の頭数を勘定してみたんですが、大体200人ぐらいいらっしゃいました。多分、S660は軽自動車の開発で、

エンジン、ミッションはN-BOXのものが流用され、その分の開発が無いですから、フルタイムの専従者は100人とみました。それから他の車種と掛け持ちでやってる人を100人とみて、そこはザックリ半分と見て50人分。この2つを合計して、工数的には150人体制でやってると前提してみました。

そうすると開発期間は3年で、一人当たり大体、社会保障費も含めて1,000万円だとすると、全部で45億円になります。

三つ目が設備投資額なんですけど、これも八千代工業、今のホンダオートボディですね、そのホームページを見ると、如何にS660を安く作っているかを紹介してるんですね。

なかなか面白いですよね。普通、板金ボディの溶接って溶接治具を作って、これがまた高いんですね。それで、それに自動で部品をセットして、自動でロボット溶接となるとフィットやN-BOXみたいな売れ筋車種なら、元が取れるんで投資をするんですけど、S660だと全然採算が合わないです。

ボディはリベットで仮組みしてからスポット溶接するという賢さ!

そこで八千代工業は上手いですね。簡易の溶接治具を作ったり、リベットで組立ててスポット溶接していくやり方もやってましたね。たぶんスポット溶接は増し打ち以外は手打ちをしてるかもしれないです。

自動車メーカーと同じグループで、生産だけを請け負ってるメーカーって結構大変です。カーメーカーのデカくて最新鋭の工場にはフィットとかN-BOXとか、沢山売れて作り易い車種をバンバン効率よく流すんで、楽なところがあります。

一方、N-VANとかS660みたいな作り難くて台数も少なくて読めない車は八千代工業みたいなところが引き取って生産する訳です。だから八千代工業なんかはこういう作り難い車を安く作るのが得意なんでしょうね。

ですから、かなり投資が抑えられているとみて、これはもう全くもって私のエイヤッ!ですけど、15億円とみました。

そうなると、トータルで開発投資額は120億円と勝手に推測しました。大体、車の開発って何百億円も掛かりますから、120億円は正に破格です!

まあ、そこまでしないとS660みたいな開発の企画は通らないということになります。でここで面白いのは一台当たりのホンダの限界利益58万円に800台の年間台数を掛けると111億円ということで120億円近づくんですね。となるとですよ、こういうのってゴロが良いところで、社長からは「開発投資は2年で元を取れ!」と言われたと推察します。

まあ、そんな訳でS660の開発投資額はまったくもって私の予想ですけど、111億円ではないかと置いてみました。

通常、開発投資の回収って早くすればするほど儲けが多くなるんですが、スポーツカーの場合はそうもいかないんで、多分長めの2年で設定されたんだと思います。

ここにはカラクリもあって、さきほどのように月販計画台数400台が800台に盛られてる話があったとしても、ビートが6年作った経験がありますから、まあS660もそれぐらいは作るだろうとの経営陣の読みがあって、開発投資の回収が遅れたとしても、S660の生産期間全部をみれば赤字にはならないだろうということをみてるんだと思います。

そうすると株主としても「分かってますよ、スポーツカーは大事です。でも、いくら儲かるか分からないけど赤字にはしないでね」という中で、株主良し、メーカー良し、お客良しということで、三方を上手く成立しているというのが、このS660の企画なんだと思います。

ホンダのDNA

という訳で、ホンダっていうのはこういうのに慣れてると思います。初期のS360から続くSシリーズ、NSXなんかで、こういう大して商売にもならないものに情熱を傾けて、なんとか企画を通すことに慣れていて、S660も正に身銭を切ってでも企画してやってる訳ですね。

S360は試作までで、市販されたのはこのS500からです

たぶん、それが彼らがいってるホンダのDNAであって、レース活動をやって、そこからスポーツカーが派生して、そいつらを作るために一生懸命に量産車を作って儲けますよというのが、ユーザーも求めているホンダのスタイルだと思います。

最後にホンダならびに関係者の皆様、いろいろ勝手に詮索をして申し訳ありませんでした。私はヤマハも好きなんですけど、ホンダも大好きで、S660とカブ3台、あとGB350も持っていて、昔、ホンダが提唱してた6輪ライフを超えて、12輪ライフをしておりますので、根っからのホンダファンということで、ここは平に赦して下さい!

ホンダ提唱の6輪ライフ!シティは懐かしいですし、モトコンポもホンダらしい商品でした

以上になります。ご覧下さいまして、ありがとう御座いました。それでは、また! 

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